アルカンターラは、高品質の人工皮革として認知されています。
多くの人が、人工皮革を天然皮革の劣った代替品と見なすことがありますが、アルカンターラはその常識を覆します。
実は、天然皮革と比較しても、優れた特徴を持つ場合があります。
この記事では、アルカンターラの独特な特性と、なぜ高く評価されているのかを掘り下げていきます。
アルカンターラの起源とその独自性
アルカンターラは、人工スエードの革新的なブランドで、アルカンターラ社が製造しています。
このブランドは1972年、日本の化学業界のリーダー「東レ」とイタリアの主要な工業企業「ENI」との合同プロジェクトの成果として生まれました。
この事実は、アルカンターラが日本の影響を受けていることを示しています。
アルカンターラの起源は、東レが1970年に開発した革新的な技術にあります。
この技術は、その後、東レとENIの共同事業により製品化されました。
現在、アルカンターラ社がイタリアで製造する製品は「アルカンターラ」として知られ、日本で製造される製品は「エクセーヌ（現在はウルトラスエードとして知られている）」と呼ばれています。
アルカンターラの名前の起源
アルカンターラという名称は、アラビア語の「Al Qantara（アル・カンタラ）」からイタリア語調に変えたものです。
「Al Qantara」は「橋を架ける」という動詞から派生した言葉で、「石橋」や「アーチ橋」を意味します。
このブランド名には、日本とイタリアの間の友情の橋を築く願い、さらには東洋と西洋の文化をつなぐ架け橋であることへの希望が込められています。
アルカンターラの独特な特性
例として、フェラーリ 458スペチアーレモデルに使用されたチャコールグレーのアルカンターラ素材を挙げてみましょう。
アルカンターラは、約68%のポリエステルと約32%のポリウレタンから作られています。
この素材は、豊富な色彩の選択肢、水を弾く性質、低燃焼性、高い通気性、そして優れた耐久性を持ち合わせています。
従来、高級車の内装には、豪華な外観と感触を提供する本革が主流でした。
しかし、本革には湿気を帯びやすい、熱を吸収しやすい、耐久性に若干の問題があるなどの欠点があります。
これに対し、アルカンターラはこれらの欠点を克服し、さらに本革に非常に近い感触と外観を持つことで、高級感を損なわずに本革の代替素材としての地位を築いています。
アルカンターラの上質な魅力
アルカンターラ素材の主要な魅力は、スエードに匹敵するデザインと高級感です。
スエードは高級でデザイン性に富む素材として知られていますが、耐久性が低く、汚れやすいため、自動車の内装にはあまり使われていませんでした。
こうした状況の中、アルカンターラは重宝されています。
豊かな質感と扱いやすさを理由に、メルセデスベンツやBMWなどの高級車ブランドが採用を増やしています。
アルカンターラは、高級感と実用性を兼ね備えた素材として注目を集めています。
アルカンターラは本革に比べて汚れに強い
アルカンターラと本革を比較すると、アルカンターラの方が汚れにくいという利点があります。
しかしながら、長期間使用するとどの素材でも汚れは避けられません。
例えば、ステアリングなどの部分は、手垢や汗が積み重なり、時間と共に汚れが目立つようになります。
アルカンターラは非常に細かい繊維で作られており、汚れたからといって強く擦るのは避けるべきです。
汚れが生じた場合は、温水やアルカンターラ専用、または適応するクリーナーを使用し、慎重に清掃することが推奨されます。
これにより、素材を傷めずに汚れを除去することができます。
アルカンターラは動物福祉に配慮した素材
アルカンターラの品質特性に加え、この素材は動物福祉にも配慮している点でメリットがあります。
前述の通り、アルカンターラはポリエステルやポリウレタンのような化学繊維で作られており、これらは石油や天然ガスを原料としています。
そのため、本革のように動物を利用せずに製造できます。
現在、動物に優しい製品への関心が高まっており、この点がアルカンターラの大きな利点となっています。
動物を使用しない製造プロセスは、倫理的消費に重きを置く顧客にとって特に重要な要素です。
アルカンターラを選択する自動車ブランド
アルカンターラを内装素材として採用している自動車メーカーに焦点を当ててみましょう。
アルカンターラを本格的に使用し始めた最初の自動車メーカーは、イタリアの「ランチア」で、1984年から全車種に採用しています。
これにより、アルカンターラの知名度は大きく向上しました。
その後、アルカンターラはメルセデスベンツ、BMW、ランボルギーニ、アストンマーチン、マセラティなど、多くの高級車ブランドに採用されるようになりました。
特に注目すべきは、生産台数が限られたランボルギーニ「シアン FKP37」の内装にも使われていることです。
日本の自動車メーカーにおいても、レクサスLSの特別仕様車の天井部分、フェアレディZ、ロードスターRS、トヨタ86、スバルの高級グレードなどでアルカンターラが採用されています。
これらの例は、アルカンターラが高級車における主流の内装素材としての地位を確立していることを示しています。
まとめ
アルカンターラの高品質な特性により、高級車の内装素材としての採用が増えています。
加えて、動物福祉への配慮が重視される現在、特に高級車ブランドにおいては、動物由来の素材を避ける傾向が顕著になっています。
この動きは、今後もさらに強まると予測されます。
品質と倫理的配慮の両方を兼ね備えたアルカンターラに対する需要は、将来的にも増加すると見込まれます。
車選びに際しては、シートの素材にも注意を払うことをお勧めします。
アルカンターラのような素材は、車の快適性と環境への配慮を両立させる一つの方法です。
