多くの人が自動車免許を取得する際に、自動変速(AT)限定のライセンスを選ぶことがあります。
しかし、時にはマニュアル変速(MT)車を運転する必要が生じたり、単にMT車の運転に挑戦したいと思う人もいます。
この記事では、AT限定の免許をMT免許にアップグレードする手順と、そのために必要な費用について説明します。
自動車のATとMTの基本的な違いについて
自動車には、オートマティック(AT)とマニュアル(MT)の二つの主要なトランスミッションタイプが存在します。
オートマティックトランスミッション、略してATは、運転中の変速を自動で行うシステムです。
一方、マニュアルトランスミッション、略してMTは、運転者がクラッチを操作しながら手動でギアを変える必要があるシステムを指します。
特にマニュアル車では、坂道発進のように複雑な操作が必要になることがあり、これは運転初心者にとって難易度が高いと感じられることが多いです。
エンスト、つまりエンジンが停止するという問題は、このような状況でよく起こります。
オートマティックトランスミッション車は、このような複雑な操作を必要とせず、運転をより容易にします。
過去には大型車両(トラックやバスなど)は主にMTが使われていましたが、現在はAT車両が増えています。
それでも、MT車を運転する必要がある職業も存在し、MT免許を持っていると就職の際に有利になることもあります。
また、MT車の運転に魅力を感じる人も多く、マニュアル免許は今でも需要があります。
AT限定免許とMT免許の主な違いについて
1991年に始まったAT限定免許の導入は、それ以前の時代には存在しなかった新しい制度です。
この変更前は、運転免許はMTとATの区別なく、一つの普通免許で全ての普通乗用車を運転できました。
主な違いは、MT免許ではマニュアルとオートマチックのどちらの車も運転可能なのに対し、AT限定免許は名前の通り、オートマチック車のみの運転が許可されています。
この制度が導入された背景には、オートマチック車の普及が大きな影響を与えていると考えられます。
■教習の違い
免許を取得する過程では、AT限定かMTかの選択が必要です。
この選択により、教習の内容が異なります。
AT免許の場合、実習に使用する車はオートマチック車となり、マニュアル車の教習よりも実技の時間が短くなります。
その結果、AT限定免許の取得にかかる費用は、通常、マニュアル免許よりも安価です。
また、無事故・無違反で教習を進める場合、AT免許は取得までの期間も短くなる傾向があります。
AT限定免許からMT免許への変更方法
AT限定免許からMT免許への変更は「限定解除」と呼ばれます。
ここでは、その手順を詳しく解説します。
■限定解除について
AT限定免許を持つ方は、MT車の運転が許可されていません。
しかし、MT車を運転する必要が生じた場合、新たに免許を取得する必要はありません。
このような時、限定解除というプロセスが利用可能です。
AT限定免許はオートマチック車にのみ運転を許可していますが、限定解除を行うことでMT車も運転可能な普通免許に変更できます。
これには、教習所での実技講習が最も効率的な方法です。
限定解除を完了すると、MT車とAT車の両方を運転できるようになり、免許の更新時も限定のない免許証が交付されます。
■限定解除の手続きと費用
限定解除は、所轄の公安委員会が実施する「普通免許限定解除審査(技能試験)」に合格することで可能になります。これは運転免許センターまたは自動車学校で受講できます。
教習所での限定解除費用は教習所によって異なりますが、AT限定免許の場合は約5万~12万円が相場です(2023年12月時点)。
夜間教習の場合、費用が多少高くなることがあります。
■限定解除審査の教習内容
教習所での技能講習では、以下の技術を習得します。
・クラッチとギアの操作
・発進と停止
・コース内での走行(ギアチェンジを含む直線とカーブ)
・踏切での停車と発進
・坂道での発進
・S字走行とクランク走行
・バックでの駐車
・方向転換
・縦列駐車
これらの講習を終えると、「みきわめ(卒業検定の前に技能が習得されたかの確認)」が行われます。
みきわめに合格すると卒業検定に進み、合格すれば「技能審査合格証明書」を受け取ります。
この証明書を運転免許試験場に持参し手続きを行うと、即日で限定解除が完了します。
まとめ
AT免許を持つ人がMT免許に限定解除を行う理由は多岐にわたります。
例えば、新たに購入する予定のスポーツカーがマニュアル車である場合や、仕事で突然マニュアル車の運転が必要になる場合などです。
免許を取得する際に、最初からマニュアル免許を取得していた場合と、後から限定解除する場合のコストや手間の違いを考えると、初めからマニュアル免許の選択を検討するのが賢明かもしれません。
AT限定免許とマニュアル免許のどちらを取得するかを検討する際に、この情報がお役に立てば幸いです。